この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
千一夜
第63章 第九夜 隣人たちとの狂宴
「学生はん、あんたええとこに住んでんな」
 一週間後、元ミュージシャンは約束通りオーディオセットを持って僕の家にやってきた。
「大家さんというか、こちらの日野さんのお陰です」
 僕は元ミュージシャンに日野さんを紹介した。
 早朝の玄関前掃除のときに、僕はオーディオセットを購入したと日野さんに報告した。大家と店子の良好な関係を維持していくためには隠し事はご法度だ。
「伺ってもいいかしら」
「どうぞ」
 大家と言えば親も同然。店子と言えば子も同然。日野さんに逆らう気は僕にはない。
「大家はん、今日はよろしゅうお願いします」
 そう言って、元ミュージシャンは日野さんに一礼した。
 軽バンに積み込まれた品物を僕と元ミュージシャンで部屋の中に運ぶ。
「はぁ~、部屋の中もええ感じや。学生はん、この部屋は当たりやで」
「ふふふ」
 笑ったのは僕ではなく日野さんだ。
 元ミュージシャンがセッティングを始める。
 アンプはYAMAHA。スピーカーはDIATONE。レコードプレイヤーはTechnics。
 十分もかからずにセットアップ終了。
「ちょっと音出すで」
 元ミュージシャン、選んだのは四人囃子でもYUMI MATSUTOYAでもなくビルエバンズ。
 眼鏡を掛けて哲学の香りを漂わせているおじさん。
 元ミュージシャンがレコードをターンテーブル上にのせる。すると日野さんがレコードのジャケットを手にした。
「ビルエバンス。萩原さん、ジャズ好きなの?」
「あー、僕あんまり音楽知らないんです。ジャケ買いで選んだんです。すみません」
「ジャケ買い……」
 日野さんが僕をちらりと見て、もう一度ジャケットに目を落とした。
 ターンテーブルが回った。針がゆっくりレコードに下りてくる。
 曲は“Come Rain Or Come Shine”
 ピアノとウッドベース、そしてドラム。音が鳴り出してしばらくすると元ミュージシャンが声を上げた。
「ええ音や!この部屋は最高や。ええ感じでこの部屋の空気が音を響かせてくれてるわ。学生はん、あんたラッキーやで。ほんまええ音や」
 褒められたのは僕ではなく、この部屋とビルエバンス。
 だが、僕は日野さんの次の言葉に心臓が止まりそうになった。
「本当に素敵な音。あー失敗しちゃった。貸すんじゃなかったわ」
 出て行けと日野さんに言われたらどうしようか?
 
/840ページ
※結果は非表示に設定されています
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白いエモアイコン:共感したエモアイコン:なごんだエモアイコン:怖かった
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ