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第6章 陽子

・・・50万　ご融資しますよ・・・　

大柄な支配人は笑顔で借用書にサインを求めて来た
その日　康二は借りたお金をチップに替えて　清算した時　70万の現金が
手元に戻り　その場で　50万を支配人に返すと

・・・凄いですね　末永さんは　お店は儲かりませんよ・・・
困った顔で言って来る　支配人の言葉を聞き　
高揚したまま　自宅へと戻った
その日から三日が過ぎた時　
康二は最後のチップがディーラーの手元に消えて
立ちあがった幸次は真っ直ぐ　支配人の許へ歩み寄ると　
また50万円を借りて
チップへ替えて　テーブルへ戻り　
その日手元には30万円が残り　自宅へと帰った　
2週間後支配人の手渡して来た200万円の借用書にサインをして　
50万円を持ち　チップに替え　テーブルに着いて　
1時間後には　最後のチップがディーラーの手元に
消えてしまうと　康二はまた　支配人の許へ行き　
融資を申し込み　首を振られて　
その日は自宅へ戻って行った　

ーー　康二は何度でも　後戻りは出来たはずーーー　

最初の日で　
止めておけば　
勝った時で止めれば　
貯金に手を付ける前で
貯金が無くなった時に

　　・・・れば

　・・・たら　

人の愚かさが　蜘蛛の糸に　蟻地獄の砂の底に　康二を突き落としていた
翌日　康二は昼間　営業の外出時に　サラ金の門を叩き　50万円を抱え
2週間後には3件目のサラ金の門を叩いていた　
カジノの返済日になり　
会社に大柄な男が二人と少し痩せた男が訊ねて来て
康二に返済を迫って来た　康二の手元には返す金も無く　
項垂れるしかなかった
そして　康二は男達の提案を黙って受入れ
自宅の地図を手渡して　一時間後に
陽子から　携帯に電話が入って来た