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背徳のキス
第3章 2話目
だが、彼女の祈りは神に届く事はなかったようで、翌日彼女の元を再びあのマーマンが訪れたのだった。
但し彼女の予想とは大分違っていた。
まるで覇気が無い上、白い肌は蝋のようだ。
今にも死相が現れそうなぐらい、顔がげっそりとやつれている。
「謝りに来たんだ。昨日はごめん。」
蚊の鳴くような声だった。
その憔悴っぷりに「誰だこの人?」とシェリーは一瞬思ったが、彼の陰鬱な雰囲気から察するに、追求は憚られた。
「大丈夫です。一晩寝たら落ち着いたので。」
本当は文句をぶつけてやりたい所だったが、こんなお通夜状態の彼を怒鳴り付けるのは気が引けた為、やや不本意ではあるが、ひとまずシェリーは彼を許す事にしたのだった。
「.....なら良かった。ところでさ、この近くで銀の指輪見かけなかった?探してるんだ。」
力無く笑ってそう問い掛けてくる彼の声は絹糸のように細く、深い諦めが滲んでいた。
「見ました。取ってくるのでちょっと待っててて下さい。」
“やっぱり彼の指輪なんだ。
早く取って来てあげないと”
謎の使命感に駆られたシェリーは、すぐさま引き出しへと向かい、巾着袋を探した。
「あ、ありましたよ!て、うわぁ!!」
シェリーは、素っ頓狂な悲鳴を上げる。
魂を抜き取られた屍同然だった彼が、いつの間にか亡霊のように背後に立っていたからだ。