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君とメメント・モリ
第18章 死神の秘密
二人は善良な人間だった。苦しい思いはさせたくなかった。

翼はありったけの力を込めて唸り声をあげて念じた。
彼らを体の中から引っ張り出し、引き剥がそうとした。

燃え移った炎で黒焦げになった手足が、不自然に反り返る。魂は相当な痛みと苦しみを感じているはずなのに、物凄い力で自分たちの体にしがみついていた。


「あの子を置いていくわけにはいかない。」

「僕たちはあの子を幸せにしてやる前に死ぬわけにはいかない」

翼に噛みついて食いちぎるような猛烈な執念に、翼は実際に魂の一部をもぎ取られたかのような痛みを覚えた。

火の塊に包まれた赤い車の上で、結界の入り口が閉じはじめる。

魂をむしり取り、無理やり車体から出した。

その瞬間、二人が五感で得ている感覚と、薄れゆく意識の中を駆け巡る想念が、翼の内部に押し寄せるように流れ込んできた。
焼けただれ、引きちぎられるような痛みと、気が狂わんばかりの生への執念が翼を襲った。翼は声にならない喚き声を発した。

炭と化した身体から離れた魂は、二筋の光になって稲妻のように鋭い速さで宙をさまよった。

翼は最後の力を込めて、ぽっかりと闇をのぞかせる結界の裂け目に向かって二人の魂を押し出した。

二人の魂が、この世から消えた。

ガソリンと煙のにおいが立ち込め、遠くからサイレンの音が聞こえてきた。
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