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幼遊戯
第3章 春休み~夏海~
隆弘兄は「調教されたくなったらいつでもおいで」と手をひらひらさせて、私と春樹を見送った。

隆弘兄の家から歩けば一時間はかかる道のりを春樹は自転車を引いて、私はその横について歩く。

……気まずい。

一連の流れを考えると春樹が私のことを好きなのは間違いない。

これはどんなに鈍い私でもわかる。

けどいつから?

いつから春樹は私のことを好きだったんだろう。

「……ひいた?」

「何が?」

「夏海のこと好きってバレてんだろ?まあ隠す気もなかったけどさ」

あんなことをしておきながら何だけど、私は春樹をどのくらい好きなのか自分では推し量れずにいた。

物心つくまえから一緒にいて、もちろん好きっていう感情はあるけれどその種類が春樹とおんなじかって聞かれたら自信ない。

「そんな顔すんなよ。別に夏海には何も求めてねえからさ」

「……ごめん。私そういうのあんまり分かんなくて」

「知ってる。だからもともとそんな焦ってなかったし」

知らなかった。

ヘタレだヘタレだと思ってた春樹が、私と同じ位置にいると思ってた春樹がいつのまにかこんなに大人になってたなんて。

「けど隆弘兄に触られたときは鳥肌たったよ。春樹だとすっごく気持ち良かったのに」

何とかフォローしたくて、私なりに春樹は特別なんだと伝えたくてそう言ったら、春樹は耳まで顔を赤くしながら口をぱくぱくさせる。

「慣れてねえやつほどたち悪いわ」

「え!私何か間違えた?」

「いいや、今はそれで十分だ」

何だろう。

今すっごく春樹に触りたい。

「春樹」

「ん?」

「部屋行ってい?」

「なっ、おまえはっ、ホントたち悪すぎっ」

「だって春樹に触りたくなっちゃったんだもーん」

そう言って自転車の荷台にまたがった。

春樹はぶつくさ言いながらもちょっと嬉しそうに自転車を漕ぎ始めている。

あと少しだけ、あと少しだけだから、もう少し待っててね。

私は心の中でそう声をかけながら、春樹の背中にぎゅっとしがみついた。




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