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犯されたスイミングスクール
第2章 謎の男
 プールを縦に挟んだ奥の入り口に男らしき人物が立っている。

「おかしいな。この時間は一般開放してないはずなんだけどな」

 彩は、アオイに体操を続けるよう指示して、男が立っている入り口へと向かった。

──職員の人が間違えて入れちゃったかな。
 
 いつもとは異なる時間帯ではあるので、こんな事もあるかと思いながら彩は、謎の男に声を掛けた。

「すいませーん。この時間、一般の方は──」

「うひっ、やっと会えたね、僕の彩ぽょん♪ 」

 彩の言葉を遮りながら、男は興奮ぎみに言葉を発した。
 
 汗のにじんだTシャツに半ズボン。
 ボテッ、と膨らんだお腹周りは肥満そのもので、顔には脂が浮いている。他人であれば関わりたくない容姿と、不快な言葉づかいに、彩の身体は危険信号を発していた。

──今、私の名前を呼んだのか?

 彩は、身体に力を入れ少し身構えた。

「……あの、どちら様ですか? 」

「僕だよぼく。彩ぴょんがプロデビューした時からずっとDM送ってたじゃん 」

 男は、彩の全身を舐め回すようにみている。
 彩は男が普通ではない事を悟った。
 この手の輩は、現役の頃から少なからずいた。心を落ち着かせ、冷静に対象を心がける。

──落ち着け、この手の男は強気に出ればびびってだいたいの奴は逃げる。逃げない時は、警察とか監視カメラとかで脅せばいい。

「あの、用がないなら出て行ってもらえますか。ここは関係者以外は立ち入り禁止ですよ」

 彩は威嚇するように声を張り上げたが、男はニヤケ面を崩さない。

「そんなんに怒らないでよ彩ぴょん。僕はずっと彩ぴょんを探してたんだ♪ 彩ぴょんを僕専属の性処理オナホスイマーにするために♪ 」
 
 男は彩の注意などおかまいなしに、卑猥な言葉を喋り続けた。
 "性処理オナホスイマー"彩はこの言葉に、恐怖ではなく、水泳に対する侮辱に怒りが湧いていた。
 汗で黄ばんだTシャツの胸ぐらを躊躇なく彩は掴んでいた。

「おい、お前いい加減にしろ──…………。」

 彩の威勢が電源を切られたロボットのように大人しくなった。
 口は半開きに、ボーッと焦点の定まらない虚な目は、先程の怒りを微塵も感じさせない。
 
 突然静かになった水泳場に、新たな音が響いた。

「んむっ、ぐちゅ、ぢゅりゅ♪ ぢゅりゅぢゅりゅ、ゴキュ♪ 」

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