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ネコの運ぶ夢
第1章 捨てネコ
自慢じゃないが、うちはとても狭い。今、食事をしているダイニング(と言っていいかわからないような昭和的な空間だが)とリビング(六畳もないが)しかない。音子をリビングに寝かせるとすると、自分はこっちで寝るよりほかない。もちろん布団は一組しかない。まあ、夏も近いし死ぬことはないか・・・。

適当に机をどかし、寝床を確保する。
音子には布団を敷いてやり、シャワーを浴びるなら適当にしろ、と言って自分はさっさと横になった。そもそも、俺が目を閉じなければ、キッチンから風呂場がほぼ丸見えのこの家の特性上、音子はシャワーにすら入れないだろう。

目を閉じていると、じゃーじゃーと音子がシャワーを浴びている音が聞こえる。着替えとしてはTシャツを1枚出しておいたので、適当に着てて欲しい。当然のごとく、うちに女物の下着などない。音子の体型に合うアンダーもないので、裾の長めのTシャツでなんとか過ごしていただくしかない。

最初は目を閉じて時間をやり過ごそうと思っていたが、一日の疲れが溜まっていたのか、急速に睡魔が襲ってきた。

ああ、眠い・・・と思ったのが最後で、どうやら寝ていたらしい。

はっと気づく。
しまった!ガバっと起きてリビングを見る。
一応、警戒していたのだ。もしかしたら昏酔強盗宜しく、俺が寝静まった後、金品を奪って逃走、ということも考慮していた。
果たして、リビングには音子の姿はない。布団に寝た形跡もなかった。

やられた!
そう思い、ふと玄関口に目をやると、俺が寝ていたすぐ側に膝を丸めた姿勢でTシャツ姿の音子がスピスピと寝息を立てていた。

なんでこっちに!?
というか、昏酔強盗じゃなかった?

驚くやらなにやらで脱力してしまった。
俺は音子の肩に手をかけ揺する。そんなところで寝たら俺の心遣いは一体どうなる!?

「おい、そんなところで寝るな。あっちで寝ろ」
「ふにゃ?」

さっきも聞いたような声をあげ、音子が目を覚ました。
「ああ・・・本当は市ノ瀬さんを布団まで運ぼうとしたんですけど、重くて、音子には無理で・・・」
そういって頭をかく。
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