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ネコの運ぶ夢
第8章 ネコは残業を待てない
俺は大慌てで音子を背負って、激しい雨を突っ切って、駅前のタクシー乗り場まで走った。並んでいる人がいたが、「すまない、急病人なんだ!」と言って、強引に横入りをする。
並んでいた人、すみません。

運転手も、俺のただならぬ形相で異変を察知したのか、「病院に行きますか?」と言ってくれた。とりあえず、自宅に戻ることにする。

幸運なことに、自宅につく頃には雷は落ち着き、雨も小ぶりになった。
料金を払うと、そのまままた音子を背負って家に転がり込むように帰り着いた。

とにかく、温めなくては・・・。

ありったけの布団を取りだし、音子を包む。それから風呂を沸かす。
キッチンでもやかんを火にかけ、温かいお茶を淹れる。

音子・・・音子・・・

音子は家に帰ってからも、ぐったりしており何も言わない。意識はあるようだが、心配だ。
「おい、大丈夫か?音子?」
温かいお茶を飲ませようとするが、手が震えて、うまくカップが持てないようだ。

済まない、済まない・・・申し訳ない・・・。
とにかく心の中で謝り続ける。

まさか、俺が帰ってこないと思って、あんなにも不安になるだなんて。
不安で不安で、どんなに体が冷えても、あそこから動くことができなかったのだろうと、容易に想像がつく。

結局、うまくお茶を飲むことができなかったので、それは諦めて、俺はひたすら音子の体を擦り続けた。

そうこうしているうちに、風呂が沸いた。
「音子、風呂に入れるか?大丈夫か?」
ゆっくり音子が頷く。肩を貸してやりながら、風呂場まで連れて行く。前にも説明したが、うちは脱衣場なるものが明確に区切られていない。本当は、音子に風呂を使わせるなら、俺はリビングにでも行ってなければならないのだが・・・。

「音子、すまん。服を脱がせるぞ」
この状態でひとりで風呂に入らせるのは非常に不安だ。
音子はそっと頷く。

本人が良いと言ったとはいえ、さすがに裸身を直視するのはまずいと思い、目を背けながら服を脱がせようとする。ワンピースは前にボタンが有るタイプだったので、背中側から脱がせようとしてもどうしても胸に手が当たってしまう。
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