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ネコの運ぶ夢
第9章 お仕事ネコ
☆☆☆
「ああ、朝霞くんと庄司くんは受付の確認を。それから山口は講師控室の準備。山内と木下は機材点検を。後の者は配布資料のセットを頼む。」

部下に指示を出す。ホテルのホール横の大会議室を借り出しての講演会だ。公募で申し込んできた一般市民が対象なので、なにかトラブルがあるといけない。一応現場責任者としてあちこちに目を光らせる。

会場準備は良さそうだな。受付は・・・。

「課長、ちょっといいですか?」
受付の確認をしようと立ち寄ったとき、朝霞くんが寄ってくる。
朝霞くんはうちの部署のナンバー2。俺の直属の部下の中でも優秀な女性だ。30代後半ですらっと背が高く、キビキビとよく動いてくれる。ユーモアのセンスもあり、後輩の面倒見も良い。うちの課になくてはならない人物だ。
「名簿のチェックをしていたのですが、どうも一枚足りないようで・・・」
「それは困ったな・・・誰か手の空いているやつに取りに行かせようか」
俺は、椅子を運んでいた大田に声をかけ、オフィスに取りに行くように指示した。
大田を見送りながら、見ると、入口入ってすぐの柱の陰に見慣れた影がある。

「・・・音子!?」
まだ準備中だ。大人しく図書館にでもいろよ。
心の中で念じるが、音子は柱の陰から、じーっとこっちを見ている。

「え?ネコちゃん?」
朝霞くんがキョロキョロとあたりを見渡す。
「いや・・・猫じゃなくて・・・」
「ああ!本当だ!課長、本当にネコ好きなんですね!」
朝霞くんの視線を追うと、ホテルのガラス戸の向こうに黒猫がゆうゆうと歩いていた。本当に居たよ、ネコ。
「ああ・・そ、そうなんだ。猫好きでね・・・ついね・・・」
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