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ネコの運ぶ夢
第9章 お仕事ネコ
「課長!席次の指定表なのですが・・・」
別方向から今度は庄司くんが声をかけてくる。彼女は中堅の女性だ。ハーフアップの髪で愛嬌がある。見た目は活発な印象だが、話してみるとおっとりしている。若干ぽやっとしているところはあるが、真面目だし、手堅く仕事をしてくれる。
「どうした?」
「貼り付ける場所は前後2箇所でいいですか?」
「ああ。いいと思うよ」
「分かりました。あ、課長・・・スーツにホコリついてますよ」
そう、俺は開会の挨拶があるので、この暑い中、スーツにネクタイという姿に着替えている。会社に置きっぱなしにしているスーツだったので、ホコリまで気づかなった。
少しかがむと、襟についたホコリを庄司くんがそっと取ってくれる。
「取れましたよ。挨拶、がんばってくださいね!」
「お、おう・・・。」

その瞬間、ゾクリと背筋が冷たくなる。
なんだ・・・この悪寒は・・・。
朝霞くんや庄司くんに気取られないように、そっと背後を確認すると、音子がギュッと柱を掴んでじーっとこっちを見ている。

「大体、準備が終わりました。課長も休憩されますか?」
庄司くんが言う。
「課長、ネコちゃんと遊んできてもいいですよ?」
朝霞くんがいたずらっぽく笑う。「あ、でも」
「お外のネコちゃんと遊ぶと、お家のネコちゃんが嫉妬しちゃうかもですね。うちで昔飼っていたネコもそうだったんですけど、他のネコを撫でたりすると、その匂いがするのか、フーって威嚇されたりしましたもの」
嫉妬・・・まさかな・・・。朝霞くんの言葉を受けて、若干、背後から感じる音子の視線がまるで自分に突き刺さっているような気になるが・・・そんなわけないよな。うん、ないない。

「えー課長、ネコ飼ってるんですか?今度写真見せてくださいよぉ」
庄司くんが無邪気に言う。
「ああ・・・特に写真とかないから・・・」
適当に笑ってごまかすしかない。写真など、見せられるわけがないからだ。
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