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ネコの運ぶ夢
第2章 寂しいネコ
〜The lonly cat〜

28で学生時代からの知り合いと結婚をした。
結婚5年目くらいから既に夫婦仲は怪しかった。それでも1男1女をもうけ、それなりに幸せにやってきていた。
結婚当初から妻との間で小さな諍いは絶えなかった。特に子供ができてからは、俺からすると異常なまでの心配性の妻は、子どものためにアレコレと先回りして用意しようとし、俺にもそれを求めた。将来が不安で、あれこれと習い事をさせては「向かない」と言って辞めさせた。
子供たちはだいぶ嫌がっていたようだが、彼女の言っていることは間違いというわけではないので俺も黙認していた。

年が経つにつれ、彼女の不安は募っていき、その不安を解消しないという理由で俺にも怒りの矛先が向くようになっていった。

要求が増えてくる、怒りをぶつけられることが増えてくる、最後には子供に遺産が残せないほどの年収しかないということを「父親としての努力が足りない」と暗に陽になじられるようになった。

可能な限り口論にならないようにしていたが、それが今度は「逃げている」と言われる。かといって、挑発的な口調に乗ると「DVだ」と。

周囲に相談すれば「悪口を言いふらしている」などとなじられた。
死んで保険金を残せと言われたりもした。

夫婦生活は結婚して10年ほどはあったように思うが、それ以降はなくなっていた。触れられるのも嫌な様子だったので、俺は精神的にも物理的にも距離を取るようにしていた。
そして、10年前についに限界を迎えた。俺だけではなく彼女も。

ある日、家に帰ったら妻子が居なくなっていた。離婚届と毎月多額の養育費を要求する文書だけが置いてあった。
弁護士を立てて争うことも考えたが、しなかった。
結局、子どもたちに悪影響が及ぶ。そう思ったからだ。

今では、収入の8割程度が養育費として妻に渡っている。

それでも、足りない、となにかにつけて嫌味ったらしいメールが来る。

今でも時折思い出す。憎しみのこもった目で俺を見つめ「死ねばいいのに」と言った、妻の顔を。
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