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ネコの運ぶ夢
第2章 寂しいネコ
☆☆☆
目が覚めた。気がつくと仰向けに寝ており、音子が俺の右腕を枕にしてすやすやと軽い寝息を立てていた。

夢じゃなかったのか・・・。
一瞬、昨日のことが夢であればいいと思ったが、どうやら違うらしい。
しっかりと実在がある人間がそこにいた。

俺は音子を起こさないようにそっと腕を引き抜くと、代わりに頭の下に枕を敷く。
うーんと少し反応したが、起きることはなかった。

腕に、軽いしびれが残る。人の重みと温かさ。

音子はTシャツ一枚なので、素足があらわになっている。直視していると妙な気分になってくるので、そっと目をそらした。

ああ、随分昔のことを思い出した・・・。
俺は軽く頭を振る。時計を見ると5時30分だ。起きようとしていたのは6時だったので、まだ時間がある。

いったい、この女性をどうしたらいいんだろう。今日も仕事はある。昨日の様子だと、帰れと言っても帰ってくれそうにない。とはいえ、ここにずっといさせるわけにもいかない。

しばらく考えたが良い答えが出るわけでもなかった。

少し早いが、もう一眠りするほどの時間はないので、音子の分も含めて朝食を作ることにした。

簡単なものしかないぞ。

レタスをちぎり、トマトを添えた簡単サラダに、オムレツ、ハム、バタートーストだ。それに作り置きしてあった野菜ジュースベースの簡単ミネストローネ。インスタントだが、アイスコーヒーもつけてみた。

「おい、ね・・・美鈴さん・・・」
思わず「音子」と呼びそうになり、改めた。あまり馴れ馴れしいのも良くない。節度が大事だ。
何度か肩を揺すると、例の「ふにゃ?」という起動音とともに、目を覚ました。

「朝ごはんを作ったぞ」
言うと、ぱっと目を輝かせて起きる。
「朝ごはん!」

立ち上がり、食卓を見て歓声を上げる。そして、そのままドタドタとトイレに、用を足すと手を洗い、さっと椅子に座った。

「市ノ瀬さん!頂きましょう!!とても美味しそうです!!」
その姿を見て、思わず笑ってしまった。そして、音子は朝食もまたよく食べた。
俺が食べきる前に食べ終わり、パンのおかわりまで所望する。
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