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ネコの運ぶ夢
第10章 海辺のネコ
☆☆☆
数週間後、鎌倉駅に新しいタウン誌が並んだ。駅を往来する多くの人は手に取ることはない。たまに取っていくのは観光に来た人か、よほど地元情報を愛する人くらいのものだ。

ひとりの女性がタウン誌の置いてあるブースに近づいてきた。
別に、女性は地元好きで毎号タウン誌をチェックしているわけでもなければ、観光客でもない。たまたま仕事でこの地を訪れただけだった。
それが証拠に、ベージュのシャツに白のジャケット、ワイドパンツ、明るい茶色の少しカールした髪に、しっかりと化粧を施している。とてもこれから遊びに行く人の格好ではない。

待ち合わせよりも5分ほど早く着いたので暇つぶしにと手に取っただけだった。

何気なくパラパラとめくる。この号の特集は「海水浴以外にも!鎌倉の隠れスポット」だった。あじさい寺のページ。6月以外にも色々花が咲いていると写真付きで紹介されていた。

女性の目がそのページの一点に止まる。
「あら?」
口角が上がる。
「こんなところで見つけられるなんて・・・ねえ、静香さん・・・。」

こんなことでもなければすぐに捨てたであろうタウン誌を、女性はバックにしまい込んだ。
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