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ネコの運ぶ夢
第14章 ネコの秘密
☆☆☆
涙が止まらない。

手紙は万年筆で書かれていた。整った字だったが、あちこちに滲んだような跡が残っていた。音子も、書きながら泣いていたに違いない。

俺は両手で目を覆う。

情けねえ・・・。好きな女ひとつ守る財力もなければ権力もねえ。意気揚々と乗り込んでいっても、結局、後足で砂をかけるのが精一杯だ。

中条の家に行った数日後、四宮が俺の家に300万円が入った封筒を持ってきた。

つっかえしてやろうと思ったが、四宮が「お嬢様の手紙も入ってるはずです」と言うので、受け取った。音子は京介が俺のところに金を寄越すことを見越して、予め手紙を四宮に預けていたらしい。

手紙の中を読んで納得した。音子はあの家の使用人連中と仲が良いのだ。主人である京介を差しおいても手紙を運んでやろうと思うくらいには、音子のことを思ってくれているようだ。

この手紙で音子がどんな思いで俺の側にいたのかがわかった。所々で感じた不自然な振る舞いも、全部全部、音子なりの理由があったのだ。

手紙には「ごめんなさい」とたくさん書いてある。
馬鹿やろう、こっちこそ、ごめんなさい、だ。

ちゃんと向き合えなくて、年齢を言い訳にして、お前の思いを無視するようなことばかりして・・・本当に済まなかった。

まだまだ、言い足りない。もっと、たくさんたくさんお前に言わなきゃいけないことがあるのに・・・。

でも、全てが遅すぎる。

音子の手紙を抱きしめて、俺は声を上げて泣いた。
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