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トライ アゲイン
第8章 安祐美の母

射精を終えて
梨田は由美子を腕枕をして、つい寝落ちしそうになった。

『いけね!もうすぐ消灯時間のはずだ
看護師が各病室を見回りに来るじゃないか!』

由美子がベッドに寝ていても不思議ではない
家族が付きっきりで看護したいという申し出があったので簡易ベッドを貸し出したと、梨田が申し送り事項に記載したからだ。
でも、いくら非番とはいえ、自分がここにいるのは不味い!
面会時間だってとっくに過ぎているだろう。

この部屋の見回りが済むまで
とにかくベッドの下に隠れてやり過ごそう

ところで正確には、今は何時なんだ?

梨田は壁に掛かっている時計に目をやった。

『ん?』

時計の針は自分がこの部屋に忍び込んだ時の時刻で止まっていた。

そうか、故障していたんだっけ…

初めて由美子とこの病室でセックスをした時も
時計を見たら動いていなかった事を思い出した。

梨田は自分の腕時計で時刻を知ろうとした

『?!』

なんと、腕時計も壁に掛かっている時計と同じ時刻で止まっているじゃないか!!

『これ…どういうことなんだ?』

梨田は着衣をすませて病室のスライドドアを少し開けて廊下の様子を伺った。
体内時計の感覚では、すでに夜になって消灯時間が近いはずなのに、まだ西陽が廊下の窓から差し込んでいるではないか!

あれほど、長時間、由美子を抱いたのに
ほんの数分しか経過していないことになる。

『この部屋の中だけ、時間が止まっている?』

梨田の頭が混乱して狼狽えていると
「ねえ…帰ってしまうの?」と、ようやく由美子が失神から目覚めて、まだセックスをしたいとばかりに気だるい声で梨田の背後から声をかけた。

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