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誰にも言えない!
第5章 本当の気持ちは?
声のするほうを見ると
通路のドアから私を呼んだであろう人の姿が見えた
(なんで…?
なんで今、私の名前を呼ぶの?)
私の目が捕らえた人は
緒方先生だった
先生は私をじっと見つめ
息を切らして立っている
「先生…」
私は先生を見つめたまま立ち上がった
「どうした?」
何も知らないよしくんは
心配そうに私を見ている
緒方先生は真っ直ぐ私達の方へ歩いてきた
「何かあったの?」
「わかんないよ…」
私は溢れそうな涙を抑えながら
先生を見つめたままよしくんの問いかけに答えた
先生は私達の前まで来ると
「ごめん、芳樹
ちょっと急用が出来て今日は無理になった」
「そうですか、大丈夫ですよいつでも」
よしくんは緊迫した先生の様子を見て
少し戸惑いながらも笑顔で答えた
私は目の前の先生を見ることが出来ず
目を逸らしていた
「竹内、ちょっといいか?」
「え?」
顔を少しだけ上げて先生を上目で見上げる
「前言ってた数学の問題
出来たから見においで」
(数学の問題…?)
「え…?」
(数学の問題なんて、なんの身に覚えもないよ?)
「問題?」
「いいからおいで」
先生は私の手首を掴み
少し強引に引っ張った
「え、ちょっと先生?!」
「ごめん芳樹、ちょっと竹内に用があるから」
先生は私の手首を強く握ったまま離さない
「え、あ、じゃあ俺教室戻ってるね」
よしくんは私に混乱した様子で言った
「ごめんな、じゃあ」
先生はそう言うと
抵抗する私に構わず手を引いて歩き出した