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彼女はボクに発情しない
第11章 眠れぬ夜の間奏曲
☆☆☆
入学試験の日、少し早めに着いた私は、受験票を確認しようとカバンから取り出した。ちゃんと、入れたと思ったが、不安になったからだ。

そして、受検票はちゃんとカバンに入っていた。
「よかった・・・」

取り出して、部屋の番号を確認しようとしたちょうどその時、後ろから来た別の受験生にぶつかられて、私は大切な受検票を取り落としてしまった。

運が悪く、一陣の風が吹き抜けた。その日はもともと強い風が吹いていたから取り出すときも注意していたのに、ぶつかられて思わず手を離してしまった。

そして、受検票はその風に飛ばされてあっという間に見えなくなってしまった。

私は呆然とした。どうしたらいいか分からなかったのだ。
オロオロとすることしか出来なかった。周囲に助けを求めようとしたが、みんな参考書を読みながら、自分のことで精一杯な様子だった。

どうしよう・・・。途方に暮れている時、一人の男の子が声をかけてくれた。

「どうしたの?」

それが、あなただったのよ。藁にも縋る気持で私が事情を説明すると、

「そ、それは!一大事!!」

って、まるで時代劇に出てくる役者さんみたいな口調で言うものだから、私は笑ってしまった。そして、お陰で少し落ち着くことが出来た。

あなたは人差し指を口に含むとピンと立てて、風を読む真似をした。本当に分かっているかわからないけど、その動作もなんだか芝居がかっていたのをよく覚えている。

「ん?あっちだな!?」

なんて言って、そのままビュンとホントに風のように走っていった。

嘘?探しに行くつもり・・・なの?
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