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彼女はボクに発情しない
第22章 陽気な家族のための小舞曲
☆☆☆
お昼はそうめんだった。おそうめんの横にかき揚げや揚げ出し豆腐となすの煮浸し、ゴーヤーチャンプルーなどが並ぶ。なんか、豪華・・・。

「いっただっきまーす」
兄妹の分のおそうめんは一つのそうめん桶に盛られている。風香ちゃんと陽太が競い合うようにそうめんを食べる中、おばさまは私の分は取り分けて別に盛ってくれていた。確かにあの勢いに混ざるのはちょっと私にはできそうにない。

さすが、陽太は男の子だ。風香ちゃんもかなり食べるが、陽太は2倍くらい食べている。
ああ・・・でも良く噛んで!
私達が食事をしている横で、おばさまも箸を取る。みんなでおしゃべりしながら食べる昼食。なんか、兄弟が増えたみたいで楽しい。

「あ、そうそう、奏ちゃんさぁ」
おばさまが言うには、今日、アメリカにずっと行っていた陽太の伯父さん、正美さんが帰ってきたついでに寄るというのだ。正美伯父さんについては、私が小学校2年生くらいまでは近所に住んでいたし、小さい頃、陽太や私を遊びに連れだしてくれていたので、知ってはいる。ただ、10年以上会っていない気がする。

「お邪魔にならないようにするけど、正美さん、遠慮がないから・・・」
頬に手を当てながら申し訳無さそうにする八知おばさま。確かに、正美伯父さんは、豪放磊落というか、あまり細かなことを気にしない性格だ。陽太と勉強している部屋に乱入してこないとは限らない。

まあ、その時はその時だ。

「大丈夫だと思います。」
私は請け合った。

食後、八知おばさまと風香ちゃんが片付けをしているとき、陽太がこそっと寄ってきて、「伯父さんは大丈夫なのかな?」と耳打ちしてきた。
大丈夫か、とは、『発情』のことだろう。

「多分・・・大丈夫じゃないかな」
私は言う。そんなに強い根拠があるわけじゃないが、実は、私は陽太のお父さんに会ったときも発情したことがない。陽太、陽太のお父さんが大丈夫なのだから、陽太のお父さんのお兄さんであるところの正美伯父さんも大丈夫ではないか、と思ったのだ。

「まあ、ならいいけど・・・」
陽太なりに心配してくれているようだ。実は、私はあまり不安に思っていない。
陽太は心配かもしれないが、私は陽太が近くにいるというだけでものすごく安心してしまっているのだ。
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