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彼女はボクに発情しない
第24章 青嵐の序曲
『うん・・・男の人に接触したり、近寄ると、いつもじゃないのだけど、すごく性欲が強くなってしまうの。』

そう彼女は言っていた。そして、さっき体育の鈴木先生が奏ちゃんの後ろを通りすぎていた。
もしかして、あれがきっかけで・・・『発情』したの?

「しつれーしまあす」
いつもの奏ちゃんの数倍間延びした声で挨拶しながら、職員室から出てくる。やっぱりおかしい。普通じゃない。

「あ・・・優子ちゃん・・・」
奏ちゃんが私の方を見る。見てはいるのだが、視線が定まっていない。ぼんやりとしていて、頬はほんのりピンク色に染まっている。女の私から見ても、色っぽい感じがする。

「ごめん・・・私・・・急がなくちゃ・・・」
そのままふらりふらりと教室の方に向かって歩いていく。どうやら、急ぎ足で歩きたいようだが、足元がおぼつかないようで、危なかっしいことこの上ない。

「奏さん!」
声をかけるが、フラフラと進む様子は変わらない。周囲をあちこち見回して何かを探しているようだ。やっぱり放っておけない。

「保健室に行こう」
私は奏ちゃんの腕を掴んで、職員室の横の階段を降りていく。すぐ下が保健室だからだ。
「だ・・・ダメ・・・ダメだよ・・・人がいるところは・・・」
うわ言のようにつぶやくが、保健室に連れ込み、とりあえず座らせた。

先程よりも息が荒く、額にうっすら汗をかいている。気のせいか果実のような匂いが立ち上っているように感じる。

「陽太・・・陽太を・・・呼ばなくちゃ・・・。SOSを・・・。ああ・・・なんで・・・スマホが・・・」
身体に力が入らないのか、崩れ落ちそうな体勢になる。かろうじて椅子にしがみついてずり落ちるのを防いでいるような状態だ。

「陽太くん・・・陽太くんを呼んでくればいいの?」
問うと、コクリとうなずく。息も絶え絶えな様子だ。
「イカせて・・・貰わなきゃ・・・もう・・・ダメ・・・我慢できない・・・」

え?イカせてって・・・。

私はあの夜のことを思い出す。
陽太くんに女の子の大事なところを弄られ、半裸でのけぞって嬌声をあげる奏ちゃんの姿。幸せそうな、恍惚とした表情。

ダメ!

とっさに私は思う。
自分でも驚くほどの、ものすごい嫉妬心が燃え上がった。
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