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彼女はボクに発情しない
第25章 波乱の奇想曲
☆☆☆
まずい、まずい・・・。

慌てて私はその場を離れる。そして、頭の中で周囲の地図を思い浮かべた。
ここから一番近い、誰も来ない所・・・。
家に急ぐべきか?

自分の今の身体の状態と家までの距離を考える。
ダメだ・・・多分、間に合わない。

公園から出たらイヤでも人とすれ違う。それだけで発情のフェーズが少しずつ進んでしまうだろう。

そうこうしているうちに、視野がどんどん狭くなる。世界が灰色に染まっていく。

ああ・・・すでにフェーズは2だ。

しょうがない・・・。最良ではないけれども、と私は公園に隣接している公立図書館に飛び込んだ。ここの図書館は個室利用ができる。しかも、オール電子化されているので、人を介さなくてもいい。

図書館で発情してしまうのはどうかという思いが一瞬頭をよぎるが、もう、場所を選んでいる余裕がない。

私は端末で利用申請をすると、空いている個室に飛び込んだ。飛び込むときに、扉の構造を見て一瞬不安になる。

お願い、発情した私。変なことを考えないで!
祈る気持ちだ。

この時点ですでに私の発情のフェーズはさらに進んでいた。なにせ、端末での手続きで人とは接触がないとは言え、図書館内には利用者もいれば職員もいる。中にはもちろん男性もいるのだ。

その男性が輝くように魅力的に見えはじめる。頭の中がピンクに染まる。
お腹の奥、子宮がキュンキュンと収縮を繰り返し、ズクズクと疼く。
ああ・・・もうダメだ・・・フェーズ3になる・・・。

最後の力を振り絞ってスマホを取り出し、陽太にSOSを送る。
ごめんなさい。陽太・・・また・・・頼っちゃう。

理性が保ったのは、ここまでだった。
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