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彼女はボクに発情しない
第5章 保健室のブルース
陽太はすごい。みんなの人気者だ。

朝、霧島くんからカラオケに誘われていたときの会話。実は私にも聞こえていた。

『お前はいいかもしれないけどなあ。でも、俺らにとっては・・・なあ・・・』
『あたしらなんかと遊んでくれるかな?』
『なんか、近づきがたいっていうか・・・。』

昔からそうだ。PIHのせいで、私は人とうまく付き合えない。いつ『発情』するかわからないから、一緒に遊びに行くこともできない。

いつしか、人から距離を取るようになっていた。

別に、お高く止まっているつもりはない。避けているわけではない。
ただ、怖いのだ。

そんな私を、周囲の人は『近づきがたい』と思っているのだろう。
陽太は私に気を使って、一生懸命誘ってくれる。人の輪に入れようとしてくれる。

私がいなければ、もっともっと、陽太は色んな人と仲良くできるはずなのに。私がいなければ、もっともっと普通のかわいい子とお付き合いだってできるはずなのに・・・。

ごめんなさい。
ごめんなさい。
陽太・・・。

もう少しだけ。学校を卒業したら、そうしたら、あなたを自由にするから。だから、それまで、もうちょっとだけ・・・。

「お願い・・・私を守って、陽太・・・」

ギュッと布団の下で陽太の手を握りしめた。
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