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彼女はボクに発情しない
第30章 交響曲 ”彼女はボクに発情しない”
☆☆☆

「な!なんじゃこりゃあ!!!!」

立ち上がって手紙を読んだ陽太が、あまりにも想定外だったのだろう。雄叫びを上げる。
優子ちゃんがクスクスと笑っていた。

「ゆ・・・優子?」
少し呆けたあと、陽太が優子を探して振り向く。でも、そこに、優子はもういなかった。

これ以上は見たくない、ということだろうか。
ちょっと前に、ひらっと手を振ってそっと去っていった。
私の読唇術が間違っていなければ、唇で彼女はこう言っていた。

「アトハゴジユウニ」

あれ?あれ?と優子を探す陽太を私は後ろから抱きしめる。

陽太はフッと力を抜いて、私の腕に手をかけた。

「陽太・・・」

言いたいことはたくさんあった。

ありがとう、ごめんなさい、ただいま、帰ってきたよ、ずっと一緒にいよう、温かい・・・。

でも、口から出たのは、たった一言だけだった。

「大好き」

抱きしめた私の手の甲に、ぽたりと、誰かさんの涙の雫が落ちてきた。
陽太が私の腕をギュッと握る。私も負けないくらいの力で抱きしめかえした。
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