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彼女はボクに発情しない
第8章 北風と太陽による諧謔曲
「心当たりがないっつーか・・・。」
「じゃあ、直接聞くか」
風香がスマホを取り出して、電話しようとする。ちょ・・・ちょい待ち!
ボクが慌てて止めると、怪訝そうにする。ダメだ、直接聞かれるのが恥ずかしすぎるのもあるが、もし案件が『発情』絡みなら、奏を困らせてしまう。

「なんで止めんのよ。こう見えて、私は奏お姉ちゃんと仲いいんだから」
いや、知ってるけどさ。

奏は小さい頃から、うちに遊びに来ると、妹の風香の面倒もよく見てくれた。お陰で、風香は奏を姉のように慕っているところがある。なので、呼び名も『奏お姉ちゃん』というわけだ。

それは知ってるが、やっぱりダメだ。

「じ、自分で聞くから・・・」
なんとか、説得して、妹を部屋に帰した。もちろん、勝手に電話することがないように再三釘を差して、だ。

さて、どうしたのものかな・・・。

奏がボクのことを好きなワケがないとしてだな。それはそうだが、なんか機嫌を損ねたのは間違いないと思われる。ここは一つ、潔く謝ったほうがいいだろう。

妹と話したおかげで、少し頭が冷えたのだろう。現実的な解決策に思い至った。
とりあえず、明日、連絡してみよう。

今日は、疲れた・・・寝よう。
ぱたん、と、ベッドに横になると、すぐに意識が闇に吸い込まれていった。
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