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彼女はボクに発情しない
第9章 ボクと歌姫たちの三重奏
「頑張れ!奏!!」

陽太の声がした。瞬間、え?っと、気が逸れてしまった。ブンとバットが遅れ、空を切る。

しまった!

20球目はなんとか返した。これで18球返したことになる。
でも・・・。

「返した数は同じだね。でも、優子は1球ホームランだしね。ここは優子が1位ってことでいいよね。」
大槻さんが言う。それはそうなるだろう。

まさか、ゴネるわけにもいかない。私は唇を噛むことしかできない。

「奏、ごめん。変なときに声かけた?」
陽太がこそっと謝ってくる。

「別に・・・」
あまりの悔しさに、それ以上の言葉でなかった。
本当は応援してくれて嬉しかったのに、言い方がぶっきらぼうに過ぎたのではないかと思ったのは、しばらくしてからのことだった。
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