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彼女はボクに発情しない
第9章 ボクと歌姫たちの三重奏
次の曲のイントロが流れる。
「あ!私だ」
笹本さんが立ってマイクを持つ。

流れてきたのは、彼女の雰囲気によく似合う優しい旋律の歌だった。

♪悲しいときや、勇気が出ないときには、帰るところがあるのを思い出して
 きっとあなたを見ている人がいるはずだから
 どんな人も、生きていてひとりきりなんてことはない
 みんなみんな大きな生命に繋がっている

おっとりした優しい声にピッタリの歌詞だった。
大槻さんや霧島くんがゆっくりと手拍子を打つ。私もそれに合わせた。

彼女の歌が終わる。採点結果は97点だった。

「あーあ、奏ちゃんの勝ちだね」
ちょっとだけ残念そうに笹本さんが言う。

「ねえ、奏ちゃん!まだ時間あるからさ、次、これ歌ってみてよ!」
「三人で歌おうよぉ!」
大槻さんと笹本さんに言われて、若干困惑する。
「あ!俺!俺も一緒に歌いたい!ルリちゃんと」
霧島くんが無理やり混ざろうとするが、「もう!あんたはいいのよ、一人で歌ってなさいよ」と大槻さんにいなされてしまい、肩を落とす。
分かりやすいなこの人。

「えっと・・・これ!これ知ってる?奏ちゃん?」
笹本さんが笑いかけてくる。

今、私、あなたとライバル同士なんだけどな・・・。

そう思いながらも、私もなんだか楽しくなって、女性三人で一緒に歌う曲を選んでみた。
こんなふうに友達と一緒に遊ぶのは、本当に久しぶりだった。
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