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彼女はボクに発情しない
第9章 ボクと歌姫たちの三重奏
足がガクつく。呼吸が浅くなる。多分顔は紅潮しているだろう。口が開き、涎が垂れないようにするので必死だ。私の目は意図に反してせわしく周囲の男性を追ってしまう。頭の中が徐々にセックスのことでいっぱいになってくる。

コート近くを歩いている男性の太い腕に目が行く。
あの腕で抱きしめて欲しい。

別の男性の股間に目が移る。ああ・・・そこに隠しているあれで、私を激しく犯して欲しい・・・。

力が抜ける・・・、身体が崩れないように、いったんテーブルに手をついて、呼吸をなんとか整えようとする。お願い、あと1球・・・。残った理性を総動員してなんとかサービスを打とうとする。

だが、その瞬間、私の手はぐいと引かれた。

「ごめん、奏、貧血気味みたいなんで、あっちで薬飲ませてくる〜」
「ちょっと!試合は?」

もうすでに私の意識はふわふわと夢のような世界を漂うような状態になっていた。こうなるともう自分が何を言って何をするのか、コントロールが殆ど効かない。

世界は薄いオブラートに包まれたようになっていて、周囲で起こってることもよくわからなくなる。ただただ熱い欲望が体の奥から湧き出てきて、それに従うことしか考えられなくなる。

何か、遠くで誰かが話す声が聞こえる。そんな様子をぼんやりと感じながら、私は誰かに腕を引かれるまま移動をした。
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