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彼女はボクに発情しない
第10章 恋する乙女のための小夜曲
☆☆☆
果たして、ピアノ教室までは無事にたどり着くことが出来た。ピアノの先生は女性だし、教室の受付の方も女性なので、ここで『発情』することはないはずだ。
45分間のいつものレッスン。
多分、集中できていなかったのだと思う。すでに習ったところだったのにもかかわらず、先生には何度も注意されてしまった。
「四宮さん、今日はなんだかちょっと精彩を欠くわね」
などと言われる始末だ。
仕方がないので、曖昧に笑ってやり過ごす。やっぱり今日はダメだ。
結局、最後まで調子が出ないまま、その日のレッスンは終わった。
早く帰ろう。
周囲はすっかり暗くなっていた。お教室は街中にあるので、真っ暗というわけではないが、やはり、一人で歩くのはあまり気持ちのいいものではない。多分、陽太がいないというのが心のどこかに影響しているのだと思う。いつもより、ずっと心細い。
無意識に足早になる。
いつものコンビニの前を通り、住宅街の若干暗い道に入る。家までの道で、ここが一番暗い。逆に言えば、ここを越えてしまえば、少し気が楽になる。
早く、家にたどり着きたい。
下を向いて、ただただ、機械的に足を交互に進める。あれこれ考えてしまうと余計に怖くなる。何も考えないで、早く通り抜けてしまおう。
その時、曲がり角から出てきた男性にぶつかり、尻餅をつく。
「だ、大丈夫ですか」
男性が手を差し伸べてくれる。その手を握り身体を起こそうとした、その瞬間、心臓の鼓動がひときわ大きくなった。
グラリと、世界が揺れ、もう一度、腰が抜けたように、座り込んでしまう。
ああ、ダメ・・・ダメなのに・・・。
そう、私は『発情』してしまったのだ。
果たして、ピアノ教室までは無事にたどり着くことが出来た。ピアノの先生は女性だし、教室の受付の方も女性なので、ここで『発情』することはないはずだ。
45分間のいつものレッスン。
多分、集中できていなかったのだと思う。すでに習ったところだったのにもかかわらず、先生には何度も注意されてしまった。
「四宮さん、今日はなんだかちょっと精彩を欠くわね」
などと言われる始末だ。
仕方がないので、曖昧に笑ってやり過ごす。やっぱり今日はダメだ。
結局、最後まで調子が出ないまま、その日のレッスンは終わった。
早く帰ろう。
周囲はすっかり暗くなっていた。お教室は街中にあるので、真っ暗というわけではないが、やはり、一人で歩くのはあまり気持ちのいいものではない。多分、陽太がいないというのが心のどこかに影響しているのだと思う。いつもより、ずっと心細い。
無意識に足早になる。
いつものコンビニの前を通り、住宅街の若干暗い道に入る。家までの道で、ここが一番暗い。逆に言えば、ここを越えてしまえば、少し気が楽になる。
早く、家にたどり着きたい。
下を向いて、ただただ、機械的に足を交互に進める。あれこれ考えてしまうと余計に怖くなる。何も考えないで、早く通り抜けてしまおう。
その時、曲がり角から出てきた男性にぶつかり、尻餅をつく。
「だ、大丈夫ですか」
男性が手を差し伸べてくれる。その手を握り身体を起こそうとした、その瞬間、心臓の鼓動がひときわ大きくなった。
グラリと、世界が揺れ、もう一度、腰が抜けたように、座り込んでしまう。
ああ、ダメ・・・ダメなのに・・・。
そう、私は『発情』してしまったのだ。