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背徳は蜜の味
第30章 人妻その三十 ~生徒の保護者と結ばれて~
美杉礼子はクタクタだった。
礼子は中学の国語の教師をしているのだが、
体力的にも精神的にも限界をとっくにオーバーしていた。
それというのも、担任を受け持つクラスの男子生徒の一人が、あまりにも素行不良で、やれ万引きをしただの、やれ喫煙しただのと、しょっちゅう補導員から呼び出しをされてゆっくりと寝る暇さえもらえなかった。
そして今日、その彼の事で校長室に呼び出されて校長から直々に説教をいただいていた。
「美杉先生、例の男子生徒…ええっと伍代雅彦君だっけ?
彼は更正できる見込みはあるんでしょうかね」
義務教育ゆえに、他の生徒に悪影響を与えかねない彼を退学処分にしたいところだが、まさか、そんなことを出来る筈もなく、校長は苦々しく思っていた。
「すいません…担任の私が至らないばかりに…」
「まあ、美杉先生を責めてみたところで現状が好転するとは思えないんですが、私の立場上、先生を叱責せねばならんのですよ」
素行不良のすべての責任が担任の礼子にあるという口振りであった。
「すいません…彼の保護者ともよく話し合いますので…」
「美杉先生の私生活も大変だとは思いますが、
それとこれとは次元の違う話なのでね」
校長に私生活の事をとやかく言われる筋合いはなかった。
確かに夫が愛人を作ってしまい、今まさに離婚調停中なので体がいくつあっても足らない気がしていた。
「とにかく、もう少しお時間をください…
担任として、何としてでも彼を更正させてみせますので…」
解決の出口の光明は見いだせなかったけれど、
今はそのように告げて、この場を収めるしかなかった。
さんざん説教をされて
校長室から解放されて職員室の自分の机に戻ると、生徒の連絡簿から問題の生徒である伍代くんの家に電話してみた。
- はい、伍代です -
渋い声の男性が受話器から聞こえた。
この時間に家にいると言うことはサラリーマンではなく、自営業なのだろうか?
「すいません、伍代雅彦くんの保護者でしょうか?」
- ええ、私が雅彦の父親ですが…
また、あいつが何か? -
「いえ、今また補導されたとか、そういう事ではないんですけど…
あの、一度、雅彦くんを交えて指導させていただければと思いまして…」
今は仕事で手が離せないんだ。
もし、どうしてもと言うのならうちに家庭訪問して欲しいと言われた。