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天狐あやかし秘譚
第115章 妖異幻怪(よういげんかい)
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【妖異幻怪】この世のものとは思えない、怪しく不思議な現象のこと。
あれ・・・何か変なことが起こっているぞ?・・・みたいな。
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未明。

一番闇が深い時間、森の中を疾駆する2つの影があった。ひとつの影は障害物を器用に避けながらするすると森を抜けていく。もうひとつは、そこまで素早くはないものの、それでも常人には考えられないようなスピードで森の木々を避けながら走っていた。

もし、ある程度の霊力を有した人が、後者の人をよく観察すれば、その足元数メートル先を太めの蛇のようなものがにょろにょろと先導しているのが見て取れるだろう。

男が最適な道を進み続けられるのは、この蛇の案内に寄るところが大きい。

先導する素早い影の主が木の陰に身を隠すようにして、もうひとりを見た。蛇に先導された男が合図を送る。自分は右、先を行く男には左に行くように促した。

コクリと頷くと、先頭を進む男、御九里牙城(みくり がじょう)は左手に、10秒ほど遅れて分岐にたどり着いた男、宝生前桐人(ほうしょうまえ きりひと)は右に別れていった。

『頼みましたよ・・・御九里さん』
宝生前は心の中でそうつぶやいた。

鞍馬山の麓、少数精鋭で展開し、スクセの根城を探る。
宝生前と御九里がこの作戦を立てたのは高森とのミーティングの直後だった。

沖津鏡の制約がわからない以上、大勢で攻め込んで全滅することは避けなければいけない。かと言って、罠が予想されることから、実力がない陰陽師を送り込むのは不適だ。となると、当初の宣言通り、陰陽博士である二人、御九里と宝生前が二人で出向くのが最も理に適っていると判断されたのだ。

式神を共につけるという案もあったが、霊力を帯びた式神を複数飛ばすこと自体がスクセの目を引いてしまう可能性があるということでこれも却下された。

そして突入時間だが、早いほうがいいというのは宝生前と御九里の双方の意見が一致したところだった。向こうはこちらが十分な準備を重ねてから来ると踏んでいるだろうと考え、少しでも裏をかくべく早めの潜入を試みたわけだ。

『いずれにせよ、向こうはすでに十全な準備を整えていると考えるべきでしょうがね』
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