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天狐あやかし秘譚
第115章 妖異幻怪(よういげんかい)
20秒ほどで光は収まり、そこにはただ暗い森が広がっているのみだった。
「塔弥、よかった・・・。これで、あたしは役割を果たせたわ・・・」
声をかけられ、御九里がハッと塔若子の方を振り返った。あの日暮が偽物だったということは・・・。
「母さん?・・・本当の?」
「信じて・・・なんて虫が良すぎて言えないわよね。もう、帰るわ・・・あなたが危ないと思ったらいつの間にかここにいた。でも、役割を果たせたから。死者があまり長いこととどまっていてはいけない・・・それはあなたのほうがよくわかってるでしょう?」
それはそうだ。死者は陰気を運び、死者が長くとどまれば世の陰陽の調和が崩れる。だからこそ、陰陽師は死者を回向し、また調伏し、常世に返すのだ。
祓衆の大抵の陰陽師は、回向より調伏を得意とする。しかし、御九里は違った。その最初から回向術・・・魂を安寧に死の国に送る術の習得に熱心だった。
「あなたが、あたしのために回向術を熱心に学んでいたこと・・・死んでからやっと知ったの。ありがとう・・・。塔弥・・・あなたにいっぱいひどいことした私なのに、あなたは・・・」
「言わないでくれ!」
御九里は叫んでいた。
ぎゅっと両の手を握りしめ、唇を引き結ぶ。そうしないと思い出が溢れてきて、泣いてしまいそうだったからだ。
確かに塔若子はお世辞にも良い母親ではなかった。それどころか、いい人間ですらなかった。でも・・・確かに母は母で・・・愛が感じられた。
「あんたに会ったら言おうと思ったこと、たくさんあったはずだった・・・。でも・・・でも、何にも出てこねえよ・・・」
とうとう涙が溢れた。その顔を見られたくなくて、顔を逸らす。それでも逸らした横顔に涙が筋となって流れていった。
「・・・ひどい母親だったもんね、あたし・・・」
「俺は・・・」
言葉が溢れる。
心の中に、ずっとしまってあった言葉。ずっと言いたかった言葉。
やっと・・・やっと言える。
「母さん・・・ごめん・・・俺が・・・俺がいたから、母さんは・・・」
ふわりと、御九里の身体が抱きしめられた。それは柔らかく、心地よい感覚だった。
「あなたを・・・守りたかったの・・・ごめんなさい。つらい思いをさせてしまったわ」
「ごめん、母さん。母さん!俺がいなければ、俺さえいなければ!」
「塔弥、よかった・・・。これで、あたしは役割を果たせたわ・・・」
声をかけられ、御九里がハッと塔若子の方を振り返った。あの日暮が偽物だったということは・・・。
「母さん?・・・本当の?」
「信じて・・・なんて虫が良すぎて言えないわよね。もう、帰るわ・・・あなたが危ないと思ったらいつの間にかここにいた。でも、役割を果たせたから。死者があまり長いこととどまっていてはいけない・・・それはあなたのほうがよくわかってるでしょう?」
それはそうだ。死者は陰気を運び、死者が長くとどまれば世の陰陽の調和が崩れる。だからこそ、陰陽師は死者を回向し、また調伏し、常世に返すのだ。
祓衆の大抵の陰陽師は、回向より調伏を得意とする。しかし、御九里は違った。その最初から回向術・・・魂を安寧に死の国に送る術の習得に熱心だった。
「あなたが、あたしのために回向術を熱心に学んでいたこと・・・死んでからやっと知ったの。ありがとう・・・。塔弥・・・あなたにいっぱいひどいことした私なのに、あなたは・・・」
「言わないでくれ!」
御九里は叫んでいた。
ぎゅっと両の手を握りしめ、唇を引き結ぶ。そうしないと思い出が溢れてきて、泣いてしまいそうだったからだ。
確かに塔若子はお世辞にも良い母親ではなかった。それどころか、いい人間ですらなかった。でも・・・確かに母は母で・・・愛が感じられた。
「あんたに会ったら言おうと思ったこと、たくさんあったはずだった・・・。でも・・・でも、何にも出てこねえよ・・・」
とうとう涙が溢れた。その顔を見られたくなくて、顔を逸らす。それでも逸らした横顔に涙が筋となって流れていった。
「・・・ひどい母親だったもんね、あたし・・・」
「俺は・・・」
言葉が溢れる。
心の中に、ずっとしまってあった言葉。ずっと言いたかった言葉。
やっと・・・やっと言える。
「母さん・・・ごめん・・・俺が・・・俺がいたから、母さんは・・・」
ふわりと、御九里の身体が抱きしめられた。それは柔らかく、心地よい感覚だった。
「あなたを・・・守りたかったの・・・ごめんなさい。つらい思いをさせてしまったわ」
「ごめん、母さん。母さん!俺がいなければ、俺さえいなければ!」

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