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天狐あやかし秘譚
第115章 妖異幻怪(よういげんかい)
なんだ?何が起こっている?
何かがおかしい。何かがズレている。
「あんたは、死んだはずだ・・・」
それは、絞り出すような声だった。
「塔弥、信じてとは言わない。この山に張られた特殊な結界が、一時的に死んだあたしをここに呼び寄せた。鬼だったことが影響しているのだと思う。・・・あなたが危ない・・・それを感じてあたしは・・・」
「牙城さん!戻って!!」
母の言葉と日暮の言葉が御九里を左右から引き裂いた。
「塔弥・・・騙されないで・・・その子は本当にあなたの知ってる人?」
「牙城さん!早くこっちに!!」
御九里の背筋に冷たい汗が垂れる。頭が混乱してきた。日暮は母を幻と言い、その母が日暮を本物ではないと言う。
普通に考えれば日暮の言うことが正しい。
結界が死者を呼び寄せる・・・なくはない現象だ。しかし、そんな都合の良いことが、しかもこの敵地で起こるだろうか?
美澄・・・
御九里は日暮を見た。日暮は厳しい顔で塔若子を見つめていた。
美澄、俺のために・・・来てくれたのか?
極度の怖がりなくせに、それを押して真夜中の森をひとりで・・・。
そこまで考えて、先程から感じていた違和感の正体に気づいた。
『おかしい』
「おい・・・日暮」
じっと御九里が日暮を見つめる。その目がかすかに動揺したように見えたのは多分気のせいじゃない。
「お前・・・なんであれが『塔若子』だと・・・知ってるんだ?」
そう、知ってるわけがないのだ。
写真も残ってない、鬼となって行方不明になった塔若子の生前の顔を知っているのは御九里自身をおいて他にいないはずだ。なのに、日暮は最初から母を『塔若子』と名指ししていた!
ポケットから緑色のガラス玉のようなものをひとつ取り出すと、素早く日暮の足元に投げつけた。100%の確信があるわけじゃない、だからこその水気の破幻術・・・!
「水天玄冬 偽幻砕々 天帝真視 急々如律令!」
「牙城さん!」
足元から青い光が立ち上り、彼女の身体をたちまちの内にその光に溶かしていった。光の中、日暮『だったもの』の皮膚が崩れ、骨が砕けていく。
幻だとわかっていても、愛する者が死にゆくさまを見せつけられるようで、それは心地の良いものではなかった。御九里は思わず目をそらした。
何かがおかしい。何かがズレている。
「あんたは、死んだはずだ・・・」
それは、絞り出すような声だった。
「塔弥、信じてとは言わない。この山に張られた特殊な結界が、一時的に死んだあたしをここに呼び寄せた。鬼だったことが影響しているのだと思う。・・・あなたが危ない・・・それを感じてあたしは・・・」
「牙城さん!戻って!!」
母の言葉と日暮の言葉が御九里を左右から引き裂いた。
「塔弥・・・騙されないで・・・その子は本当にあなたの知ってる人?」
「牙城さん!早くこっちに!!」
御九里の背筋に冷たい汗が垂れる。頭が混乱してきた。日暮は母を幻と言い、その母が日暮を本物ではないと言う。
普通に考えれば日暮の言うことが正しい。
結界が死者を呼び寄せる・・・なくはない現象だ。しかし、そんな都合の良いことが、しかもこの敵地で起こるだろうか?
美澄・・・
御九里は日暮を見た。日暮は厳しい顔で塔若子を見つめていた。
美澄、俺のために・・・来てくれたのか?
極度の怖がりなくせに、それを押して真夜中の森をひとりで・・・。
そこまで考えて、先程から感じていた違和感の正体に気づいた。
『おかしい』
「おい・・・日暮」
じっと御九里が日暮を見つめる。その目がかすかに動揺したように見えたのは多分気のせいじゃない。
「お前・・・なんであれが『塔若子』だと・・・知ってるんだ?」
そう、知ってるわけがないのだ。
写真も残ってない、鬼となって行方不明になった塔若子の生前の顔を知っているのは御九里自身をおいて他にいないはずだ。なのに、日暮は最初から母を『塔若子』と名指ししていた!
ポケットから緑色のガラス玉のようなものをひとつ取り出すと、素早く日暮の足元に投げつけた。100%の確信があるわけじゃない、だからこその水気の破幻術・・・!
「水天玄冬 偽幻砕々 天帝真視 急々如律令!」
「牙城さん!」
足元から青い光が立ち上り、彼女の身体をたちまちの内にその光に溶かしていった。光の中、日暮『だったもの』の皮膚が崩れ、骨が砕けていく。
幻だとわかっていても、愛する者が死にゆくさまを見せつけられるようで、それは心地の良いものではなかった。御九里は思わず目をそらした。

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