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天狐あやかし秘譚
第117章 献身奉仕(けんしんほうし)
☆☆☆
その後、どうやって自分の部屋に戻ったのか、私はきちんと記憶をしていなかった。ひとつだけ覚えているのは、のろのろと自分の布団に潜り込もうとしたときに、水有が目を覚まして『どうしたの?お姉ちゃん』と問いかけてきたことだった。
それに対してなんと答えたか覚えてはいなかった。
部屋は静かだった。
さっきまで耳元でこだましていた、あの狂った叫び声が嘘のようだった。
考えてみれば、あんな大声で叫んだのに、家族の誰もあの倉庫に来なかった。そのことに思い至ったとき、『もしかしたらあれは夢かなんかだったのか』とも思った。
でも、布団の中でいつまでも温まらない足、震える肩、ドキドキとまだ高鳴ったままの心臓の鼓動の全てが、あの出来事が本当だと私に告げていた。
父が言っていた『キンキ』とは、『禁忌』のことだったのだ。
家族の誰も知らないままに私は禁忌を犯し、あの未来を『視て』しまったのだ。
その後、私はこのことを誰にも言うことはなかった。あんな未来を見たことを同意っていいのかわからなかったし、このときの私は『あれは気のせいで、実際にはあんなことは怒らないに違いない』と思い込もうとしていたきらいもあった。
言葉にしないことで、『なかったこと』にしようとしていたのだった。
その後、どうやって自分の部屋に戻ったのか、私はきちんと記憶をしていなかった。ひとつだけ覚えているのは、のろのろと自分の布団に潜り込もうとしたときに、水有が目を覚まして『どうしたの?お姉ちゃん』と問いかけてきたことだった。
それに対してなんと答えたか覚えてはいなかった。
部屋は静かだった。
さっきまで耳元でこだましていた、あの狂った叫び声が嘘のようだった。
考えてみれば、あんな大声で叫んだのに、家族の誰もあの倉庫に来なかった。そのことに思い至ったとき、『もしかしたらあれは夢かなんかだったのか』とも思った。
でも、布団の中でいつまでも温まらない足、震える肩、ドキドキとまだ高鳴ったままの心臓の鼓動の全てが、あの出来事が本当だと私に告げていた。
父が言っていた『キンキ』とは、『禁忌』のことだったのだ。
家族の誰も知らないままに私は禁忌を犯し、あの未来を『視て』しまったのだ。
その後、私はこのことを誰にも言うことはなかった。あんな未来を見たことを同意っていいのかわからなかったし、このときの私は『あれは気のせいで、実際にはあんなことは怒らないに違いない』と思い込もうとしていたきらいもあった。
言葉にしないことで、『なかったこと』にしようとしていたのだった。

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