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恋人岬には噂があった
第1章 第1話
 だが、これまで何度も呟いてはいたが、叶ったことは一度もなかった。灯台の光は航行の道標のように、水平線をかすめているだけなのだろう。
 トンネルに侵入した野上の視界に、オレンジ色の光が飛ぶように、車の後方へ流れて行くのが見えた。
 岬のトンネルを抜けると、オレンジ色に照らされた長い下り坂が続き、次は緩やかな左カーブに差しかかる。この時刻になると、山あいのカーブを下るにつれて、遠くの闇の中に、白色灯に照らされたこの町のスーパーマーケットの看板が見えて来る。カーブを抜けたとき、その周辺には町の明かりが地図のように広がっていた。
 野上はその町の明かりを見て、頼まれた食材を買って帰るのを忘れたなら、由香に怒られるところだったなと、今日の昼間、娘の由香から届いていたメールが頭に浮かんで来た。台所に立つ由香の冷たい流し目も浮かんでいる。
 野上はスーパーの看板をちらと見た。仕事帰りにスーパーへ寄っていくには、この先を左に折れて農道を走り、潮崎団地手前の国道を通って行くことにしている。
 バイパスを外れて分かれ道のカーブに差しかかったとき、わずかにすかした窓から、車内に外気が流れ込んで来た。右手の向こうは渚の続く海である。外気の中に、ほんの少しのあいだ潮の匂いが混じっていた──。

 現在四十六歳の野上英二は、この町の生コンクリート会社に、四年ほど前から勤めていた。
 入社当時は、定年が近づいた前任者からプラントの制御などを教わり、懸命に覚えたことだった。仕事の内容は、プラント全般とミキサー車の配車である。
 今では前任者から引き継いだ、同業者との繋がりも強固に出来ている。
 ただ、野上は休日出勤の配車には気をつかう。平日だと順番通りに配車すればいいが、休日には会社のドライバー全員に予定がないとは言えないからだ。それは同業者でも同じだった。お互いにドライバーが足りないときには、前日までに同業者に連絡して、相手側のミキサー車ごとチャーターして解決しているのだった。
 そんな野上英二は、自宅では大学二年生の娘の由香と暮らしている。
 二人暮らしだが、仕事と家庭は充実しているといつも思っている。やりがいのある仕事に就き、娘の手作り弁当もお気に入りのひとつであるし、娘に対して少し甘いかもしれないが、日々楽しく過ぎていた。
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