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メス猫加奈子の生活
第1章 メス猫加奈子の生活
 結城が何の仕事をしているのか、加奈子は知らない。昼過ぎに起き、夕方出て行き、朝方部屋に帰ってくる。ただ、たまに、”お客さん”を連れて来ることがあった。それは、男だったり、女だったりした。”お客さん”は、部屋の片隅に置いてある檻をのぞきこみ、そこに全裸で寝ている、赤い首輪のメス猫加奈子の姿を見て、あぁ、このコね、と言う。
「こんなにたくさんクリップをハサまれて、痛くないのかしら」
「痛いでしょうね、ふふふっ」
 笑いながら結城は答える。
「猫として飼っているんですか?」
「まぁ、猫ですから」
 結城はまた、笑いながら答えた。

 お昼頃、ベッドでうとうとしている結城の耳に、「にゃーん」という声が聞こえた。
「起きたかい、かなこ」
 最近では、メス猫加奈子は、もう人間の言葉も喋らない。にゃっ、と、可愛く鳴いて、ご主人様にご飯をねだる。
 眠い目をこすりながら結城は起き上がり、髪の毛もボサボサ、Tシャツとトランクスだけの格好でキッチンに行くと、棚から猫缶を一つ取り出して、パカっ、とそのフタを開け、猫の食器に中身を出した。
「ほら、かなこ、ご飯だよ」
 檻の中に差し出すと、ちょこんと座った全裸の加奈子が、にゃーん、と嬉しそうにひと鳴きし、猫の食器に顔を突っ込むと、クチャクチャと音を立てながら、猫のご飯を食べていく。
「今日はいい天気だな、シーツでも洗濯するか」
 結城はベッドからシーツを外し、洗濯機に放り込んでスイッチを入れた。
 最近では、もう、加奈子がエッチをねだる事もない。本物の猫のように、加奈子は結城と暮らしている。お仕置きのつもりでハサんだクリップも、全部外してしまった。結城は、ご飯を食べた加奈子を檻から出して、自由に遊ばせる。ご主人様にスリスリしてくる加奈子を、結城は自分の膝の上に乗せ、そのままパソコンをしたりする。そのお尻には、どうなっているのか分からないが、可愛いフサフサのシッポまで生えているのだ。
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