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drifter (漂流者)
第1章 漂流者(drifter)
 3

 そう…
 このインターネットというバーチャルな虚飾の空間と、リアルな現実が融合された、今、現在のこの世界…

 この世界の中でわたしはこうして自分の欲求を満たす為にこの『嘘』『ウソ』の演出を構築し…
 この『嘘』とリアルの融合、混在したこの世界の中を漂流しているのだ。

「ふうぅ、さてと…」
 わたしはそう呟き、『メガネ』のズレを掛け直し…
 今度はタブレットを手にした。

「さて、眠くなる前に続きを書かなくちゃ」
 そう呟きながらネットの携帯小説サイトにアクセスをしていく。

「あ…」 
 するとタブレットの画面上に感想レビューのマークが付いている。

 それをクリックする…
『この人妻の快感に溺れていく様がたまりません
 この先どんな………………楽しみです』
 と、賛辞のレビューが書かれていた。

 そうわたしはこのサイトでは人妻不倫モノの官能小説を描いているのだ…
 なぜならこのサイトは『人妻』『不倫』『SM』『調教』等々のジャンルが人気だから。

「あ、やったぁ」
 その証拠に、わたしのこの小説がついにベスト5にランクインしていた。

「よし、続きを書いて…と…………」

 だが…
 ピタリと筆が、いや、ネット小説であるから、タイピングの指先の動きが止まってしまう。

「うーん………」

 今、描いているこの続きは…
 不倫している人妻が、相手の若い男のテクニックの強く、深い快感に溺れていく展開の流れなのだが…

「う………ん……どうしよう………」

 実は…

 わたしは…

 わたしの…

 わたしの本当は…

 わたしは男に抱かれた経験が…

 セックスの経験が…

 無い…

 無いのである…
 
 つまりは…

 つまりは処女なのだ…

 だから女の快感…

 セックスの快感…

 ましてや溺れるほどの人妻のセックスの快感、エクスタシーなんてわかりようが、いや、自慰しか経験が無いから、描きようが、いいや、想像すらできない。


 そして、いや…

 ううん、いいや本当は…

 本当のわたしの姿は…


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