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drifter (漂流者)
第1章 漂流者(drifter)
 5

「はぁぁ、うぅん…」
 ヴーーーー
 バイブの電源を入れて挿入する。

 わたしはセックスの経験のない、いわゆる処女なのであるが…
 思春期から大人への成長と共に性への成長も伴い、そしてネットからの情報から、こうして自慰三昧の日々を送り…
 だから快感は、自慰の快感だけは十分に体感し、知り尽くしてはいたのだ。

 ヴーーーー

「あ、ん、んん……」

 ヴーーーー

 だが、本当のキスの、いや、人肌の触れ合いの感触…

 他人の、男の、体温や汗のニオイ…

 そんなリアルな経験が無い為に、全く想像もつかない。

 心の中ではもうこの引きこもりという生活の限界を分かっている…
 いや、限界の悲鳴を上げている自覚はあった。

 だが、リアルが怖い…

 この『チビ』『デブ』『ブス』の『チブス』のままでは絶対に外に出たくは、いや、世間の目に晒されたくはない。

 だが、なんとかしなくては…

 そんな思いの心の葛藤が毎日起こっていた。

 だが…

 ヴーーーー

 ヴーーーー

「あ…ん、あぁ、い、イクぅ…」
 だがこの自慰の、ほんの小さな快感だけでわたしの心は簡単にその葛藤の思いがリセットされてしまうのだ。
 
 そして…

『その彼の激しい攻めにより、子宮の奥からかつてないエクスタシーの快感のウネリが………………』

「うん描けたわ、こんなもんで大丈夫よね」
 と、今の自慰の快感を参考に小説の続きを書き、サイトにアップをし…

『レビューをありがとうございます………』
 貰ったレビューの感謝を掲示板機能に書き込みしていく。

「ふわぁ、オナったから眠くなっちゃったぁ…
 少し寝ようかなぁ」
 そして『メガネ』を外してベッドに横になる。

 結局は、外の世界に飛び出ていく勇気なんて湧かないし…

 あんな自慰の簡単な快感で心の葛藤はリセットされてしまい…

 そして『嘘』の『SNS』の『いいね』に一喜一憂し…

 わたしは虚飾の空間であるインターネットの世界で、リア充ないいオンナを演じ、悦に浸る。

 いや違う…

 こうして虚飾とリアルな現実の狭間でわたしは…

 わたしは一生…

 死ぬまで漂流していくんだ…

 いやわたしは漂流者…

 このまま流されていく漂流者…

 それが心地よいんだ…

  
       
        ……end



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