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雨が好き
第112章 桜の雨
それは確かに、
蒼人さんの手に降り積もる雨のようにも見えて
ついでに、桜の花を見上げる蒼人さんの顔が
とても優しくて、温かくて

瞬間、私の脳裏に、雨の日の蒼人さんがたくさん過ぎる。

神社で出会った時、雨に打たれて泣いていた
美術館で雨の絵を見ている時、とても、とても悲しそうな顔をしていた
病院で窓の外の雨空を見ている時は、
本当に、そのままどこかに消えてしまうんじゃないかって、本気で心配した。

いつも、雨を見上げているあなたは、とても寂しい目をしてて、
私の声も聞こえないんじゃないかと思うほど遠くに行ってしまっているようだったのに、

今、目の前にいるのは、あの日、雨の中で泣いていた蒼人さんとは全然違って・・・
確かに、確かに、そこにいて、
そこに、私といっしょにいてくれて・・・。

「蒼人さん」

思わず、声を掛ける。

「なんですか?」

ちゃんと、声、届いている。
私の声、届いている。

一歩、彼に近づいた。
また、一歩・・・足早に、もう一歩。
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