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年の離れた妹
第2章 アパート
「あれ、デパート?」
妹は振り向くと、僕に訊いた。その瞬間、僕はワンピースから伸びた白い太ももに見入っていた。妹は気づいていた筈だが、そ知らぬふりで僕を手招きしていた。僕は少しばつの悪さを感じたが、すぐにベッドにあがり妹の隣に座った。ずっと先に、妹の勤務先のデパートが見えていた。

「そうだな、初めて気付いた」
「じゃあ恵津子も、デパートから兄ちゃんの部屋が見えるね」
妹はいつの間にか、僕の身体に寄りかかっていた。その日は風のない、蒸し暑い夜だった。僕も恵津子も、身体に汗をかいていた。暑さだけでなく、ふたりとも身体を密着させて歩いて来た。僕は妹にシャワーを勧めた。

「兄ちゃん、一緒に入ろ!」
妹はごく自然に、僕に向かって口に出した。ふたりには子供の頃のように、当たり前に響いていた。

「風呂場、狭いよ?」
「うちも昔、狭かったね」
確かに今のマンションに引っ越すまでは、実家は小さな公団住宅だった。しかし、妹が小学生になると、今の実家に引っ越ししていた筈だった。

「えっちゃん、昔の家のこと覚えてる?」
「うん、覚えてるよ」
妹が幼稚園の頃、母はもっとも忙しかった。教師をしていた母は産休明けで復帰したあと、以前にまして忙しく働いていた。父はサラリーマンで普段から忙しく、僕が小さな妹の幼稚園の迎えもしていたことが多々あった。母が帰ってくるまで、風呂も含めた恵津子の世話は、中学から高校時代の僕の役目でもあった。お陰でクラブ活動はほとんどできなかったが、妹の世話をしながらであっても、勉強することはできた。妹は小さな頃、活発で空気の読める子供だった。
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