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心の中のガラスは砕けて散った
第9章 8月
背中を汗が流れる、バスを降りて五分の道のり
住宅街の奥の自宅の玄関を開け 煮物から立ち上る
懐かしい醤油の香り、リビングに入り キッチンを見た

「 おかえりなさい 」

優しい母親の顔が、

「 ・・た・・ただいま・・ 」

「 今日からお世話に成るわネ 早く着替えて! 」

綾乃は 慌てて寝室に、普段着に着替え
リビングに戻った

「 荷物は? 」

テーブルに出されたお茶を一口啜り
綾乃は母親に聞いた

「 明日、届くは お仏壇と洋服、整理タンス一棹 」

綾乃は頷き

「 お母さんは 客間を使って 」

リビングの扉の向こうを指で指した
母親が頷き、

「 何時から、働いて居るの? 」

テーブルに出したお茶を一口飲んだ母親が
綾乃の顏を伺うように 眺めて来る

「 今週、初めからだよ、何で? 」

綾乃をじっと見つめる母親の目が すっと
反らされ

「 何が有ったのか、判らないけど 貴方は
  壮馬ちゃんと悠馬ちゃんの母親なの
  忘れたら駄目だからね! 」

反らした目が戻り 綾乃の瞳の奥を覗き
確かめる様な声音で 言って来る、
黙ったまま、母親と目を合わせ、綾乃は
視線を外した、余りにも激しい変化の四日間
母親に告げ 相談したい言葉を飲み込み 頷いた
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