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心の中のガラスは砕けて散った
第9章 8月
**  

15日

康二は 夏祭りの雑踏の中を歩いていた
各町内が 趣向を凝らした出店を 天幕の中
浴衣を着た主婦が 声を張り上げ賑やかな声が
呼び込みを

浴衣を着た子供や 若者が駐車場から
聞こえる盆踊りの音楽に 音頭に合わせ
軽妙に手を振り 迷子の放送が時折流れる中
天幕の中の主婦達に声を掛け挨拶を交わして
関係者の腕章を付け 祭りの雑踏を歩く

康二の 歩みが止まった

黄色いティーシャツに長い黒髪が
金魚すくいを覗き込み 声を上げる姿
忘れられない後姿 思わず
康二は女性の後ろに立ち 肩を 軽く叩いた
長い髪の女性が振り向いてくる

匠が嬉しそうに声を上げ 金魚すくいの
ポイを金魚の泳ぐ水槽に入れ 金魚を追う
覗き込む早紀の肩を叩かれ振り向いた

とても 逢いたく無かった顔が・・・
とても 逢いたかった笑顔が・・・・

縁日の喧噪が 匠の声が消える

忘れられられない笑顔がそこに 
初めての公園のデートが 
ラブホで抱かれた姿が
裸で抱き合い 与えられた快感が蘇る

康二と視線を合わせ驚いた顔で 
声を出さない唇が

・・・ こうじさん ・・・・

動く
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