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心の中のガラスは砕けて散った
第9章 8月
沢入が立ち上がり、扉に向かう後ろを綾乃は付いて行く
ビルを出て 沢入は、小さなカフェの扉を開け奥の席に
綾乃も黙って前に腰かける 近寄って来た店員に
沢入は珈琲を頼み、綾乃が頷く顔を見て指を二本立て
黙って店内を見回し、綾乃に視線を向け

「 儂は 時間に余裕が出来ると此処に来て
  お客様の顔を見て、想像をしていてね
  その人の視線、会話を聞いている 」

沢入の言葉を、出された珈琲を口に視線を合わせた

「 あの人達の仕事は? どういう付き合い? どんな人間関係? 」

「 付き合いの有る、二人は座って居る姿で判るもんだ
  どの位の付き合いだろう? 付き合い始めた時の
  表情程、面白い物は無い、お互い相手を知ろうと
  自分を良く見せたい、視線の奥の輝きがそれを
  物語る、〇〇と言う女優は? 」

有名な女優の名前を聞いて、綾乃は頷く

「 あの娘も 最初は下手だった、何度もダメを
  出して、ある映画で 涙を出すシーンが
  彼女が私の処に来て、脚本を3回は読み直したよ、
  難しいシーンだった 」

昔を思い出す様に 話しは続く

「 脚本は単純な物だった 監督は何人かの女優さんに
  声を掛け、公開オーディションを行ったんだ
  彼女もその前に出た、テレビドラマの、準主役の
  演技が認められ そのドラマが映画に 彼女が
  脚光を浴びて事務所も勢いに乗せようと
  彼女を、応募させたと 私の処に来た時、彼女が
  教えて呉れたよ、彼女がその映画の主役の座を掴んだ時
  私の許に来て、台本を読ませて貰って 彼女に
  演技指導をしたんだ、」

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