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第9章 ８月

「　この世界には、よくある事なんだ、」

「　舞台に立った　貴女を見て、自分には釣り合わない、
　　守る相手が手の届かない世界に、羽ばたいた姿を見て　
　　身を引いてしまう　良く有る話だと、彼女には話したよ　」

事務所の人間達は、彼女の私生活を把握してなかったんだろう
ドラマで脚光を浴びて、映画に成って人気が鰻登り
勢いに乗って売り出せば、ドル箱に成るから
皆、自分の米櫃を豊かにする事だけを考える世界だから

マネージャーも事務所も売り出す事に必死で　彼女の
心の内を見る事も無く、話を進めて、真面目な彼女は
期待に応えたいと、言われるままオーディションに
臨んだと言ってたよ　映画のストーリーは単純な物で
　
育児ノイローゼの母親が買い物依存に掛かり、
１年もしない内に　７００万の借金を作ってしまい　
離婚され、借金を返す為だけに　毎日働き続け
９年目に完済し　離婚した夫と娘に謝りたいと
電話を掛け、娘が遊ぶ姿を見るだけならと　許しを貰い
遠くから娘を見る積りが　娘と会話を交わしてしまう　
娘にお母さん？　と聞かれ　首を振って別れて駅に向かう
ストーリー　その中に幾つもの山場を作り
演技が問われる映画を、監督は求めたと思う