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ユイとルイ
第2章 結衣子
結衣子は10歳で私と出会ってからずっと、私のことを名前で呼んでいました。それが初めて「お父さん」と呼んでくれたのは、小学校の卒業式でした。活発でずっとサッカーをしていた結衣子は、友達や先生にも可愛がられていました。式では卒業生代表に選ばれ壇上であいさつをしました。そして友達や先生に対する感謝を述べたあと、最後に妻と私にも触れました。「お父さん、お母さん…ありがとうございました!」と大きな声で壇上から叫び頭を下げる結衣子の姿に、私たち夫婦だけでなく周りの父兄からも大きな拍手が贈られました。式後に会った結衣子のはにかんだ笑顔を、私は一生わすれないでしょう。
感傷に浸る間もなく、いつの間にか機内サービスが始まっていました。CAさんがドリンクを持って回ってくると、結衣子は目を輝かせドリンクを選んでいました。そしてお菓子ももらうと、結衣子は母のことを忘れたように上機嫌になりました。
「LCCとは違うね!」
もらったお菓子を頬張りながら、結衣子が私のお菓子にも手を伸ばしました。そして包装を外し手に取ると、私の口元に持ってきました。私が一口だけ噛みきると結衣子は残りを自分の口に放りこみました。15歳の娘は薄化粧をしていましたが、まだまだ子供でした。私があきれたように顔をしかめると、リスのように頬を膨らませたまま、結衣子は満面の笑みでウインクを返しました。
「お母さん、罪滅ぼしのつもりかな?」
「なにが?」
「だって、ツアー費用はお母さんが出してくれたじゃんw」
お菓子を食べきると結衣子は笑顔のまま、辛辣な言葉を吐きました。私はまた結衣子の頭を撫でると目を瞑りました。結衣子は私の肩に頭を乗せると小さく言葉を続けました。
「まあ、いいよ…お父さんがいるから」
私が目を開けて覗き込むと、結衣子も目を瞑っていました。私も再び目を瞑り、結衣子の体温を肩に感じていました。
感傷に浸る間もなく、いつの間にか機内サービスが始まっていました。CAさんがドリンクを持って回ってくると、結衣子は目を輝かせドリンクを選んでいました。そしてお菓子ももらうと、結衣子は母のことを忘れたように上機嫌になりました。
「LCCとは違うね!」
もらったお菓子を頬張りながら、結衣子が私のお菓子にも手を伸ばしました。そして包装を外し手に取ると、私の口元に持ってきました。私が一口だけ噛みきると結衣子は残りを自分の口に放りこみました。15歳の娘は薄化粧をしていましたが、まだまだ子供でした。私があきれたように顔をしかめると、リスのように頬を膨らませたまま、結衣子は満面の笑みでウインクを返しました。
「お母さん、罪滅ぼしのつもりかな?」
「なにが?」
「だって、ツアー費用はお母さんが出してくれたじゃんw」
お菓子を食べきると結衣子は笑顔のまま、辛辣な言葉を吐きました。私はまた結衣子の頭を撫でると目を瞑りました。結衣子は私の肩に頭を乗せると小さく言葉を続けました。
「まあ、いいよ…お父さんがいるから」
私が目を開けて覗き込むと、結衣子も目を瞑っていました。私も再び目を瞑り、結衣子の体温を肩に感じていました。