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コンビニバイトの男の子
第9章 雨
萩子は壁のスイッチを操作して照明を点けました。急な明るさに一瞬目を細めますが、貴之がこちら向きでアイマスクをして眠っている姿が見えます。本人が言っていた通り、寝室を明るくしても起きる気配は微塵もありません。
(よかった。これで)
「ほんと、ぐっすり寝てますね」
「っ!!」
すぐ横で悠希の声が聞こえ、びっくりします。叫び声を上げそうになり、慌てて手で口を塞ぎました。目だけで抗議を訴えますが、悠希は素知らぬ顔で中を覗き込みます。
「あ、アイマスクしてるんだ。これなら大丈夫ですね」
そう言うと、ドアノブに手を掛けたままの萩子の手に掌を重ね、ゆっくりドアを中に押し開きました。そのまま萩子の躰を後ろから押すようにして、寝室に入って行きます。
「ち、ちょっと悠希くんっ?」
思わず萩子が声を上げますが、
「いいからいいから」
と、悠希は押し入り、後ろ手でドアを閉めると、ロックを掛けました。
「何してるのよ!もし貴之さんに見つかったら」
「へー、旦那さんのこと、貴之さんって呼んでるんですね。初めて聞きました」
場違いなところに感心する悠希に呆れます。
「そんなこといいから、早く出てっ!」
「貴之さん、睡眠薬飲んでるんでしょ。だったら大丈夫でしょ」
悠希は振り向いた萩子を引き寄せると、いきなり抱きしめました。
「こういうところでしたら、めっちゃ興奮しますよ」
「何馬鹿なこと言ってっ」
抗議の言葉は、途中で悠希の唇に塞がれます。
「んっ!んーんんっ!」
萩子が悠希の肩に手を置いて押し離そうとしますが、がっちりと腰に手を回されてびくともしません。肩を叩いて抵抗しますが、悠希は意に介さず舌を挿し入れて口内を蹂躪し始めます。
(こんなキスされたら、私・・・)
夫の貴之がすぐ近くで寝ているという状況ながら、待ち焦がれていた悠希の唇の感触に、抵抗する気が徐々に薄らいできます。悠希の舌の動きに応じると、叩いていた手の動きが止まりました。肩から悠希の背中に手を回して抱きしめます。
(あぁ、悠希くん・・・)
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