この作品は18歳未満閲覧禁止です
夜をほどく
第10章 ゆらぐ日常、染まる影
数日後の夕方。
オフィスの廊下で光貴とすれ違った瞬間、彼の手がごく自然に自分の手に触れた。
それだけで、心臓が跳ねる。
ほんの一秒の接触が、全身の血を熱くした。
「今夜、時間あるか?」
その声は、誰にも聞こえないように低く、耳元でだけ震えた。
「……はい」
声が出るまでに、少し時間がかかった。
罪悪感も、恐れも、もう抑えにはならない。
彼に触れたい。
彼に壊されたい。
そう思うことが、なにより“生きている”実感を与えていた。