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夜をほどく
第10章 ゆらぐ日常、染まる影
数日後の夕方。
オフィスの廊下で光貴とすれ違った瞬間、彼の手がごく自然に自分の手に触れた。

それだけで、心臓が跳ねる。
ほんの一秒の接触が、全身の血を熱くした。

「今夜、時間あるか?」

その声は、誰にも聞こえないように低く、耳元でだけ震えた。

「……はい」

声が出るまでに、少し時間がかかった。

罪悪感も、恐れも、もう抑えにはならない。
彼に触れたい。
彼に壊されたい。

そう思うことが、なにより“生きている”実感を与えていた。
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