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夜をほどく
第10章 ゆらぐ日常、染まる影

帰宅すると、夫が妙に優しかった。
ワインを開け、夕食の皿を洗いながら、珍しく仕事の愚痴をこぼしていた。
けれど――その声が耳に届かない。
目の前の食卓も、温かな部屋の灯りも、自分にはどこか他人事のようだった。
「ねえ、最近どう? 体調とか……」
「うん、まあ……普通」
嘘だった。
本当は、肌の奥が火照っていた。
頭のどこかでずっと、光貴の手の感触が消えない。
彼の熱、唇の味。
あの夜の喘ぎと鼓動。
心臓の奥をひっかくような、彼の指先。
「……ごめん、ちょっと頭痛い。先に寝るね」
ベッドに潜り込んでから、スマホの画面を確認する。
通知の中に、ひとつだけ非表示のメッセージ。
《会いたい》
それだけ。
だけど、それだけで、また身体の奥に疼きが走る。
ワインを開け、夕食の皿を洗いながら、珍しく仕事の愚痴をこぼしていた。
けれど――その声が耳に届かない。
目の前の食卓も、温かな部屋の灯りも、自分にはどこか他人事のようだった。
「ねえ、最近どう? 体調とか……」
「うん、まあ……普通」
嘘だった。
本当は、肌の奥が火照っていた。
頭のどこかでずっと、光貴の手の感触が消えない。
彼の熱、唇の味。
あの夜の喘ぎと鼓動。
心臓の奥をひっかくような、彼の指先。
「……ごめん、ちょっと頭痛い。先に寝るね」
ベッドに潜り込んでから、スマホの画面を確認する。
通知の中に、ひとつだけ非表示のメッセージ。
《会いたい》
それだけ。
だけど、それだけで、また身体の奥に疼きが走る。

