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夜をほどく
第12章 夜明けの代償

「ねえ、最近帰りが遅いけど……何かあった?」
食卓越しの夫の声が、妙に柔らかく響いた。
けれどその眼差しは、いつもの鈍さとは違っていた。
わずかな鋭さと、不自然な沈黙。
紗江の手が、持っていたスプーンの中でわずかに震える。
「……仕事が立て込んでて」
言い訳は、嘘のない嘘だった。
本当に忙しかった。
だけど、その“忙しさ”の合間に、確かに彼と重ねた夜があった。
ベッドに入ってからも眠れず、スマートフォンを握ったまま時間だけが過ぎる。
光貴からの連絡はなかった。
既読にもならないメッセージがひとつ、画面に浮かんでいた。
《…あの夜から、何も手につかない》
それだけ。
だけど、胸の奥が焼けるように疼いた。
食卓越しの夫の声が、妙に柔らかく響いた。
けれどその眼差しは、いつもの鈍さとは違っていた。
わずかな鋭さと、不自然な沈黙。
紗江の手が、持っていたスプーンの中でわずかに震える。
「……仕事が立て込んでて」
言い訳は、嘘のない嘘だった。
本当に忙しかった。
だけど、その“忙しさ”の合間に、確かに彼と重ねた夜があった。
ベッドに入ってからも眠れず、スマートフォンを握ったまま時間だけが過ぎる。
光貴からの連絡はなかった。
既読にもならないメッセージがひとつ、画面に浮かんでいた。
《…あの夜から、何も手につかない》
それだけ。
だけど、胸の奥が焼けるように疼いた。

