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雨にほどける
第4章 ベッドサイドの静けさ

――肌が触れたのは、ほんの少しだったのに。
それだけで、すべてが変わってしまいそうだった。
「……澪ちゃん」
涼の手が、私の背中に回る。
バスタオル越しに感じる体温は、穏やかで、なのにどこか、切実だった。
「髪、まだ濡れてるのに……」
そう囁く声に、彼女の唇が耳の近くをかすめた。
一瞬、息が止まる。
「先生……やっぱり、夢みたい」
「夢だったら、もう一度キスして、確かめてみる?」
答える代わりに、私はそっと目を閉じた。
次の瞬間、柔らかな唇がそっと触れる。
ひとつ、ふたつ、迷うような口づけ――。
そして、そのまま唇の端を辿るように、頬へ、まぶたへ。
「……かわいい」
涼の声が、あまりにも優しくて、思わず涙が滲む。
こんなふうに触れてほしいと、ずっと思っていた。
ほんの少しの視線、言葉、距離――
あの頃の私は、何も知らずに、それでも胸を焦がしていた。
タオルが外れ、濡れた髪が背中に触れる。
肌が空気に晒されて、細かく震えた。
それを感じ取ったのか、涼の指が、私の肩にそっと触れる。
「寒い?」
「……ちがうの。怖いだけ」
「何が?」
「これが……終わってしまったらって、思うのが」
涼は何も言わなかった。
ただ、私の髪を撫でながら、しばらく黙っていた。
――そして、静かに、ベッドの灯りが落とされた。
「終わらせないよ、澪ちゃん」
その言葉とともに、シーツが身体を包み込む。
手のひらが、背中を伝い、ウエストに沿って滑る。
指先が触れるたび、身体の奥で柔らかな熱が滲み始める。
雨の音だけが、ふたりを見守っていた。
それだけで、すべてが変わってしまいそうだった。
「……澪ちゃん」
涼の手が、私の背中に回る。
バスタオル越しに感じる体温は、穏やかで、なのにどこか、切実だった。
「髪、まだ濡れてるのに……」
そう囁く声に、彼女の唇が耳の近くをかすめた。
一瞬、息が止まる。
「先生……やっぱり、夢みたい」
「夢だったら、もう一度キスして、確かめてみる?」
答える代わりに、私はそっと目を閉じた。
次の瞬間、柔らかな唇がそっと触れる。
ひとつ、ふたつ、迷うような口づけ――。
そして、そのまま唇の端を辿るように、頬へ、まぶたへ。
「……かわいい」
涼の声が、あまりにも優しくて、思わず涙が滲む。
こんなふうに触れてほしいと、ずっと思っていた。
ほんの少しの視線、言葉、距離――
あの頃の私は、何も知らずに、それでも胸を焦がしていた。
タオルが外れ、濡れた髪が背中に触れる。
肌が空気に晒されて、細かく震えた。
それを感じ取ったのか、涼の指が、私の肩にそっと触れる。
「寒い?」
「……ちがうの。怖いだけ」
「何が?」
「これが……終わってしまったらって、思うのが」
涼は何も言わなかった。
ただ、私の髪を撫でながら、しばらく黙っていた。
――そして、静かに、ベッドの灯りが落とされた。
「終わらせないよ、澪ちゃん」
その言葉とともに、シーツが身体を包み込む。
手のひらが、背中を伝い、ウエストに沿って滑る。
指先が触れるたび、身体の奥で柔らかな熱が滲み始める。
雨の音だけが、ふたりを見守っていた。

