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雨にほどける
第6章 朝露のあとさき
――雨は、まだ降っていた。
窓の外、ぼんやりと煙る空に、目が慣れるのに少し時間がかかる。
身体のあちこちに残る、涼の気配。
熱も、声も、唇も。何ひとつ夢じゃない。

となりで眠る涼の寝息は、深くて穏やかだった。
薄いシーツの下、肩がほんの少し覗いている。
指先が勝手に動きそうになる。もう一度、確かめたくて。

けれど――私は、そっと手を引いた。

「せんせ」

名前を呼ぶ声は、喉の奥で丸まって、結局届かなかった。
昨夜、あんなにも欲しがってしまったのに。
朝が来ると、また臆病になる。

――このまま時間が止まればいいのに。

けれど、そうはいかない。
カーテンの隙間から、白み始めた空が覗いていた。

涼が、静かに目を開けた。

「……澪ちゃん、おはよう」

その声は、変わらず優しかった。
まるで、ずっと隣にいたみたいに。
私は頷くだけで、返事ができなかった。

「寒くない?」

「ううん……平気」

こんな短いやりとりすら、胸の奥をざらつかせる。
触れたら終わってしまう。そんな気がして、目を合わせられなかった。

「……ねえ、澪ちゃん」

涼が身体を起こして、私の頬に手を添えた。
熱はまだ、残っていた。

「昨日のこと、後悔してる?」

私は、大きく首を振った。

「してない。……ずっと、したかった」

「私もよ。ずっと、あなたに触れたかった」

その言葉で、ようやく涙がこぼれた。
胸の奥にあった痛みが、静かに雨に溶けていく。

「もう一度、会える?」

そう聞くと、涼は小さく笑って、頷いた。

「また会おう。ちゃんと、今度は、約束する」

――交わした言葉は、肌より深く沁みていった。
雨はまだ止まない。
けれどその音が、もう悲しくは聞こえなかった。
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