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雨にほどける
第9章 雨音にほどける
部屋に入ると、静かな空気が、ふたりのあいだに沈んだ。

窓の外では、ようやく降り出した雨が、
ガラスをそっと叩いている。

「濡れなかった?」
涼が、柔らかい声で尋ねた。

「うん。少しだけ」

私は微笑みながら頷いたけれど、
それはたぶん、雨のことじゃなかった。

――心の奥が、ずっと前から濡れていた。
それを知っているように、涼がそっと、私の髪に触れた。

「……澪ちゃん、髪、伸びたのね」

「先生が……最後に触れたときより、だいぶ」

その指先が、私の頬に沿って滑る。
まぶたを閉じれば、熱の気配がにじむ。

「こわく、ないの?」

囁きにも似た問いに、私はうなずいた。

「ずっと……こうなること、願ってたから」

言葉がふるえる。
けれど、その先にあるものを知っているから、
もう、怯えなかった。

涼が、ゆっくりと私を抱きしめる。

胸元に顔をうずめると、
シャツ越しに感じる体温が、じわじわと肌へ伝わる。

「ねえ、澪ちゃん……キスの続き、していい?」

「……して」

その一言が、ふたりをほどいた。

唇が重なり、深く、ゆっくりと溶けていく。
触れるたびに、過去の痛みが溶け、
今この瞬間だけが真実になっていく。

シャツのボタンが外れる音、
肌に触れる指先の熱、
耳元に落ちる吐息――
そのすべてが、雨音と混ざり合って、世界を閉じ込めていく。

「……澪ちゃん、好きよ」

「わたしも……先生、ずっと」

まぶたに、キスが落ちる。
額に、胸に、指先に――
ひとつずつ、確かめるように。

求め合うたびに、湿った音が、ふたりを包む。

まるで、雨のなかに浮かぶふたりだけの舟。
揺れながら、どこまでも遠くへ、
触れたことでしか行けない場所へと、流されていく。

そして――
名前を呼ぶ声が重なり、
深い呼吸がひとつになったとき、
私は、世界の輪郭がほどけていくのを感じた。

――今夜だけは、永遠であってほしい。

そんな願いを胸に、私は彼女の腕のなかで、そっと瞳を閉じた。
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